Column
教育メタバースでかなえる、不登校の子どもたちの居場所づくり
愛知県大府市様の成功事例
2024年11月21日
愛知県の中心部、名古屋市に隣接し、知多半島の基部に位置する大府市は、豊かな文化・自然に恵まれた人口約9万人のまちです。「日本一元気な健康都市」の実現を目指して環境保護や地域活性化に積極的に取り組んでおり、市民と行政が一体となって、「子どもから高齢者まで誰もが安心して、健やかに、生きがいを持って元気に暮らすことのできるまち」を実現するための活動を進行しています。特に教育施設は充実しており、子どもたちが安全に、質の高い教育を受けられる環境の整備に力を入れています。2023年12月にはFAMcampusを利用した教育メタバースを開設し、小・中学校で長期欠席傾向にある子どもたちに向けた新たな居場所づくりや学習支援などの取り組みを開始しました。
本コラムでは大府市が教育メタバースを開設するまでの経緯、運営上の工夫、開設後の子どもたちの様子や教育委員会としての率直な感想をご紹介します。最後に利用者のアンケート回答内容もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
(写真左から)大府市教育委員会 指導主事 伊賀 友信様、教育情報化指導員 木下 幹司様、学校教育課 近藤 祐生様
目次
教育メタバースという新たな挑戦
--はじめに、導入に至った経緯を教えてください。
近藤様:全国の不登校者数増加の傾向と同じように、大府市の不登校者数も増加しています。特に令和5年度の不登校者数は、小・中学校合わせて310名と前年度と比べて急増しました。大府市ではこれまで長期欠席者への支援として、小学校の保健室に養護教諭補助員を市独自で追加配置し、2名体制で対応できるようにする、中学校では校内での教育支援としてクラス以外での居場所を設けるなどの取り組みを行ってきました。また、学校外の取り組みとして、教育支援センターである「レインボーハウス」の設置も行ってきました。
伊賀様:保護者からは、「子どもには家から出て、学校に行ってほしい」という声が多数ありました。大府市としても「学校で支援する」という考えを強く持っていたため、とにかく子どもたちを学校に戻せば支援ができると考えていました。
その中で、学校の別室登校や教育支援センターの利用登録者数は年々増加し、さまざまな声を聴くうちに、「学校に戻せば支援ができる」という考え方は大人の都合ではないかと感じるようになってきました。
長期欠席者の子どもたちの状況はそれぞれ異なりますが、多くの子どもたちは学校の勉強についていけるか不安になっています。それに加えて、「自分はこれでいいのだろうか」という気持ちから、自己肯定感が低くなっているように感じます。つらい気持ちを抱えた子どもたちを何とかしてあげたいという思いから、学校や教育支援センターに通うことが難しい子どもたちへ、学校に戻る以外の新たなアプローチについても考えるようになりました。教育機会確保法が制定されたこともあり、他市におけるメタバースの取り組みを参考にし、大府市でも導入の検討を進めることになりました。
サービス導入に向けた不安の解消方法
--FAMcampusを知ったきっかけを教えてください。
伊賀様:もともと大府市としては、教育に限らずメタバースの活用を検討していました。教育委員会としてもメタバースを活用できるのではないかと考える中で、春日井市のメタバースを活用したオンライン不登校支援の事例を知りました。大府市でも長期欠席者に対する新たなアプローチとしてメタバースの利用ができるのではないかと考え、教育情報化コーディネーターにメタバースの教育での活用について相談する中で、FAMcampusを紹介してもらいました。
--導入にあたって判断材料にしたことを教えてください。
近藤様:導入にあたっては、いくつかの事業者を検討していました。候補にしていた他の事業者は、メタバースは用意してくれるものの、メタバースを活用した授業や児童生徒とのコミュニケーションは教育委員会が単独で担う必要がありました。もちろん教育委員会でメタバースをすべて運営する人材を確保するのが一番いいのですが、なかなか人材を配置することが難しく、最初は運営できたとしても長く続けることは難しいと感じていました。事業者の比較検討を進める中で、メタバースの提供と合わせて、長期欠席者への学習支援に経験のある学研グループの講師が学習支援も行ってくれる点に魅力を感じ、FAMcampusを採択することにしました。
--教育メタバースを導入するにあたって、不安に感じていたことはありますか?
近藤様:具体的な要望があって始めたものではなかったので、本当にニーズがあるのかわからず、メタバースを用意しても、子どもたちに参加してもらえないのではという不安がありました。また、オンライン上の、管理や把握ができないところでトラブルが発生しないかも導入前は気にしていました。また、教育委員会だけで完結する話ではなく、学校との連携も大変そうだと感じていました。導入当時は長期欠席者に対するオンラインでの支援について、事例もあまりなく、運用方法もわからず探り探りの状態でした。
--不安はどのように解消していきましたか?
伊賀様:導入に向けた打ち合わせの中で、心配していたことについて1つ1つ相談しながら解決方法を提示していただいた結果、ある程度の見通しが立ったことで不安は解消されていきました。パッケージとして決まりきったものを導入するのではなく、打ち合わせの中で大府市としての希望を伝えると、柔軟に実施方法を検討して提案してもらえたので、今後も相談しながら進めていけそうだと思えたところが良かったです。どれだけの参加者が見込めるかなど、すべての不安が解消したわけではありませんでしたが、チャレンジしようと思えました。
不登校支援における教育メタバースが目指すべき姿とは
--開設に向けた準備に関してはどうでしたか?
伊賀様:学校に対しては、まず校長先生たちに話をしました。「本当にこれで学校の出席扱いにしていいのか?」「学習支援がメインじゃなくていいのか?」「授業ではないような内容でいいのか?」など、いろいろな意見をいただきました。学校や保護者からは、「長期欠席状態にある子どもたちに、なんとか学校に行ってほしい」と思っているなかで、メタバースにどれだけ効果があるのかが問われていたと感じます。 ただ、教育委員会としては学習支援がメインではなく、居場所の一つとして選択肢を作ることが大切だと伝えてきました。教育委員会としての目的は「居場所づくり」と思っていたので、1人でも参加者がいるのであれば実施するという意気込みで準備を進めていきました。
近藤様:開設に向けた準備は、順調にできたと思います。IDの登録等も実際にやってみて、少しずつ改善を重ねながら進めていけたという満足感があります。短い期間で導入検討~準備まで進められましたし、チラシや出席認定者を管理するためのエクセルの作成など細かな要望も聞いてもらえました。オンライン説明会の実施にあたっては、開催方法の要望が二転三転してしまいましたが、対応してもらえました。
--大府市様の対応も速かったため、スムーズに進行できたと感じています。また、学習に重きを置くのではなく居場所づくりを大きな目的としていたという点で、弊社と思いが一致していたからこそ、スムーズに進められたのだと思います。
運営の秘訣は空間づくりにあり?
--授業についてはどうでしょうか?
木下様:私たちの思う支援を十分にしていただけていると思っており、満足しています。登録している子どもたちの学年幅が広いですが、参加者全員が少しでも学習に興味が持てるように、年齢・性別にかかわらず現実の社会に興味を持って意見を言える題材を扱っていることがとても大切だと感じています。特に、講師が常に子どもたちを気にかけて、明るく声をかけてくれることは、子どもたちにとってもすごく嬉しいことのようです。メタバースにくる子どもたちは心を閉ざす傾向があるため、少しでも心を開いてもらうために、大人が上から目線にならないようコミュニケーションの取り方をすごく工夫している点にも好感を持っています。
運用していく中でメタバースをどのように使っていくのかが大切だと感じています。現在は、子どもたちが自主的に参加したいと感じることができるような環境づくりを模索しており、子どもたち同士で関わりあえる時間がとれるように、メタバースの開放時間を当初より延長して、交流の機会を作っています。
他にも、子どもたちに情報を提供するということも大切だと感じています。夏休みの間に学校を回って、キャリア教育担当の先生や、養護教諭、若手の先生など、子どもたちと関わっている先生に相談しながら、メタバースを作り変えていきました。
子どもたちはつながりを求めていますが、大人がグイグイ行くと引いてしまうことがあります。メタバースは学校へつなぐ一歩手前としてのポイントと、子どもを未来へつなぐポイントという2つの側面があると考えています。ですから、学校へ無理に行かせるのではなく、メタバースの中で子どもたちが情報を集めて将来につなげることができればいいのではないかと考えるようになりました。様々な生き方があって、どういった職業があるのか、という情報を伝えてあげることが大切だと考え、メタバース内の掲示物で情報収集が少しでもできるように工夫しました。
養護教諭からは自分の生活を見直せるような情報を提供したらいいのではないか、気持ちを伝えるにはどうしたらいいかなど、様々な情報やサイトを教えてもらいました。子どもたちに役立つ情報をメタバースで紹介し、子どもたちを導いていけないだろうか、という観点でメタバースを作っています。子どもたちへの効果はまだわかりませんが、思いついたことをすぐにメタバース上で実現できることは良かったと感じています。
あとは、リアルのつながりがあると、より子どもたちとの関係性が深まるということを実感しています。学校で面会した際には一切言葉を喋らなかった子どもとメタバースで触れ合ったところ、その子から「作った作品をみんなに見てもらいたい」とチャットで連絡をもらったことがありました。見てもらいたい作品の画像をもらい、メタバース内に掲示して作品展を開催しました。また、過去につながりのあった子がメタバース上でも心を開いてくれて、いろいろ話ができたということもありました。仮想空間とはいえ、リアルとつながっているので、それをどう強く太いパイプにしていくといいのかを日々考えています。
--実際に、保護者や子どもたちに向けて行ったアンケートでも「教育委員会の先生とチャットで繋がりやりとりを楽しむことができてよかった。」や、「話すような仲ではなかった子(異学年)と、 メタバースの中で話したことがきっかけで、実際に遊ぶようになった。」という声をいただいています。居場所の一つになっていると嬉しいですね。
近藤様:導入当初のメタバース内でのやりとりは講師が話すことに対して、少数の参加者がチャットで応答することがメインでしたが、2年目に入ってからはいろんな学年の子どもたちが、学年、性別にかかわらず声を出して意見交換をするようになってきています。これからも、メタバースを活用して子どもたちにどのような支援ができるのか検討していく必要はありますが、これまでの取組の中で参加してくれている子どもたちのかかわり方に少しずつ良い変化が出てきていると感じています。
--講師からは、徐々にマイクをオンにする子が増えてきたと聞いています。良い雰囲気になっていることが伝わってきますね。
木下様:はい、そう感じます。今は、「メタバースをこうしたい」という子どもたちからの発信を募集しているのですが、まだちょっと自信がなさそうにも感じます。これからも、長い目でサポートしていけたらと思っています。
--はい、富士ソフトとしても継続的なサポートを今後も続けてまいります。本日は、ありがとうございました。
最後に
本コラムではメタバースを活用した不登校支援において、実際にFAMcampusを活用している、大府市教育委員会の事例をご紹介させていただきました。
実際に仮想空間に入りアバターで操作感を試していただける、無償トライアルも受付中です。不登校支援やその対策でお悩みの方は是非、お気軽にお問い合わせください。
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