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メタバースは学校教育をどう変える?
導入メリットと課題を解説
2025年12月23日
メタバース教育は約30万人の不登校児童生徒への支援として期待され、アバターでの参加により心理的ハードルを下げます。
時間・場所の制約解消や3D学習など6つのメリットと、費用・機材など7つの課題を自治体向けに解説します。

不登校児童生徒数の増加や教育のIT化が進む中、教育現場では新しい学びの形が求められています。その解決策として注目されているのが「メタバース」を活用した教育です。
バーチャル空間での学習は、時間や場所の制約を超えて学習機会を提供できるだけでなく、不登校の児童生徒にとって新たな居場所となる可能性を秘めています。
本記事では、メタバースが教育現場にもたらすメリットと導入時の課題について、自治体や学校での活用実態を踏まえて解説します。
目次
メタバースは学校教育でどう活用されている?
メタバースとは、インターネット上に構築される仮想空間のことです。生徒はアバターと呼ばれる自分の分身を操作し、バーチャル空間内でほかの生徒とコミュニケーションを取ったり、さまざまな活動を行ったりできます。
教育現場においては、バーチャルという特性を活かして、日常の授業や学校行事のほか、多様な用途で活用が進んでいます。
【学校教育での活用例】
- 通信制高校でのバーチャルキャンパスの運営
- 大学でのオンライン講義やオープンキャンパス
- 理科実験のシミュレーション学習
- 海外の学校とつないだ交流授業
- 歴史的建造物の仮想見学
- 不登校児童生徒への支援
とくに注目されているのが「不登校児童生徒への支援」です。自宅にいながらバーチャル空間に参加し、授業を受けたり仲間と交流したりできる環境は、学校に通うことが難しい児童生徒にとって新たな学びの選択肢となっています。
文部科学省の実証事業でも、メタバース空間を活用した不登校支援の取り組みが進められており、自治体レベルでの導入事例も増加傾向にあります。
たとえば、富士ソフト株式会社は文部科学省の「令和7年度 次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進(最先端技術及び教育データ利活用に関する実証事業)」に採択されました。
教育メタバース「FAMcampus」と教育データを活用し、不登校支援を包括的に実施するとともに、非言語的なコミュニケーションが心理状態の改善に与える効果を検証しています。
出典:文部科学省「メタバース不登校支援の広域連携モデル構築と心理状態の可視化に関する検証」(https://www.mext.go.jp/content/20250822-mxt_shuukyo01-000033768-002.pdf)
出典:FAMcampus「富士ソフト、4年連続で文部科学省の実証事業に採択 教育メタバース「FAMcampus」と教育データ、非言語コミュニケーションを活用した不登校支援を実証」(https://famcampus.jp/news/338/)
学校教育とメタバースの組み合わせが注目されている背景
なぜ今、教育分野でメタバースが注目を集めているのでしょうか。
その理由は、技術の進化による新しい学習環境の実現と、教育現場が抱える課題の解決への期待という、2つの側面にあります。
メタバースへの関心が高まっていること
近年、メタバース技術は急速に浸透し、私たちの身近な存在となりつつあります。2021年にFacebookが社名を「Meta」に変更し、メタバース事業への本格参入を発表したことは、その転換点として象徴的な出来事でした。
VRヘッドセットの低価格化や高性能化も進み、Meta QuestやApple Vision Proなど、一般消費者でも手に入れやすい製品が登場しています。
加えて、5G通信の普及により大容量データを高速でやり取りできるようになり、よりリアルで快適なメタバース体験が可能になりました。
メタバースと教育分野の相性がよいこと
メタバース技術は、もともと教育やトレーニングを想定して開発されてきた背景があります。VR技術のルーツは、パイロット訓練用のフライトシミュレーターなどにあり、安全に実践的なスキルを学ぶための手段として活用されてきました。
3次元空間での直感的な理解促進や、体験を通じた能動的な学習は、アクティブラーニングやプロジェクト型学習といった新しい教育手法とも親和性が高いものです。学習指導要領が求める主体的・対話的で深い学びの実現に、メタバースは有効なツールとなります。
出典:文部科学省「新しい学習指導要領の考え方-中央教育審議会における議論から改訂そして実施へ-」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2017/09/28/1396716_1.pdf)
教育のIT化が推進されていること
GIGAスクール構想の推進により、2021年には全国の小中学校で1人1台の端末整備がほぼ完了しました。これにより、児童生徒が日常的にデジタル機器を活用できる環境が整いつつあります。
また、新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン授業が急速に広がったことも大きな転機となりました。教員・児童生徒・保護者のあいだでデジタルツールへの抵抗感が薄れ、オンライン学習が自然な選択肢として受け入れられるようになっています。
現在、国の施策として教育DXが進むなか、メタバースは次世代の学習環境を支える新たな手段として大きな期待を集めています。
出典:内閣府「GIGA スクール構想の確実な実施に向けた緊急提言」(https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kyouikujinzai/3kai/siryo5.pdf)
不登校児童・生徒が増加していること
文部科学省の調査によると、令和6年度の不登校児童生徒数は過去最多を更新し、小中学校で約35万3,970人に達しています。この深刻な状況に対し、従来のオンライン授業だけでは十分な支援ができていない現実があります。
ビデオ会議システムを使った授業では、カメラをオンにすることへの抵抗感や、一方通行になりがちなコミュニケーションが課題となっていました。児童生徒の孤立感は解消されず、学習意欲の維持も難しい状況です。
メタバースは、アバターを介したコミュニケーションにより、こうした課題を解決する可能性を持っています。バーチャル空間が新たな居場所となり、社会とのつながりを保ちながら学習を継続できる環境として期待されているのです。
出典:文部科学省「【資料1】不登校・いじめの状況と文部科学省における対応について」(https://www.mext.go.jp/content/20240112-mxt_syoto02-000033450_2.pdf)
メタバースを学校教育に導入するメリット
メタバースを教育に取り入れることで、これまでの学習環境では難しかった新しい学びの形を実現できます。仮想空間ならではの体験的な学習や、場所・時間の制約を超えた交流など、教育の可能性を大きく広げるメリットがあります。
時間や場所の制約がなくなる
メタバースを活用することで、地理的な制約を大きく解消できます。離島や過疎地域では、専門教員の不足や通学の困難さが課題となっていますが、バーチャル空間であれば全国どこからでも質の高い授業にアクセスできます。
また、病気や怪我で長期欠席を余儀なくされている生徒も、自宅から授業に参加することが可能です。入院中であっても、病室からバーチャル教室に入り、クラスメイトとつながることができます。
災害やパンデミックなどの非常時にも、学びを止めずに継続できる手段として、メタバースは有効な選択肢となります。
3Dコンテンツによって学習の意欲と効率が向上する
従来の紙の教材では理解が難しかった内容も、3次元で表現することで直感的に把握できるようになります。たとえば、人体の臓器の構造や宇宙空間の広がり、歴史的建造物の内部構造などを、立体的に観察しながら学習できます。
この没入感の高い体験は、知識の定着率を大幅に向上させます。実際に触れて操作できる学習環境は、受け身の学習から能動的な学習への転換を促します。こうした好奇心を刺激する学習環境は、新たな可能性を発見するきっかけとなるでしょう。
危険な実験や実習を安全に実施できる
化学実験で有毒ガスを扱う場面や、高電圧を使用する物理実験など、現実では危険をともなう学習も、メタバース空間なら安全に実施できます。失敗しても身体的な危険はなく、何度でも試行錯誤が可能です。
医療分野での手術シミュレーションや、防災訓練での避難体験なども、仮想空間であれば低コストで繰り返し練習できます。高価な設備や材料を必要とせず、多様な実習機会を提供できる点は、予算が限られる学校現場にとって大きなメリットです。
失敗を恐れず挑戦できる環境を構築できる
現実世界では、失敗が減点評価につながるという意識から、児童生徒が挑戦をためらうことがあります。
しかしメタバース空間では、失敗してもやり直しがきくため、試行錯誤を恐れずに取り組めます。この「失敗から学ぶ」プロセスは、問題解決能力やレジリエンス(立ち直る力)といった非認知能力を育みます。
教員にとっても、児童生徒が自由に探究できる環境を提供しやすくなります。
アバターを介することでコミュニケーションのハードルが下がる
アバターという分身を通じたコミュニケーションには、独特の心理的効果があります。容姿や外見を気にせず参加できるため、対人不安を抱える児童生徒も積極的に発言しやすくなります。
とくに不登校の児童生徒にとって、アバターを介した交流は、社会との接点を保つ重要な手段です。
不登校児童・生徒でも気軽に参加しやすい
不登校の児童生徒の多くは、学校に行きたいという気持ちと行けない現実の間で苦しんでいます。自宅にいることへの罪悪感や、学習の遅れへの不安を抱えているケースも少なくありません。
メタバース空間への参加は、自宅からアバターで学習活動に加わることができるため、心理的なハードルが大幅に下がります。引きこもりがちな状況でも、バーチャル空間で仲間の存在を感じられることで、孤独感が軽減されます。
このような不登校支援の仕組みとして、自治体と連携したバーチャル教育空間の導入が進んでいます。
その一例が、富士ソフトが提供する教育メタバース「FAMcampus」です。「FAMcampus」は神奈川県や埼玉県の不登校支援事業に正式採択されており、子どもたちが自宅から安心して参加できるオンラインの学習・交流空間として活用されています。
最大の特徴は、「みんなを感じられる教育空間」にあります。アバターを近づけるだけでビデオ通話が始まる直感的な操作性や、交流を促す多彩なスペースなど、教育現場での使いやすさを徹底的に追求しています。
また、FAMcampusは不登校支援にとどまらず、通信制高校の授業や学校説明会、高大連携プログラムなど、幅広い教育現場で導入が拡大しています。
FAMcampusでは、教育メタバースを活用した不登校支援に関する相談を受け付けております。
お困りの際にはぜひお問い合わせください。
メタバースを学校教育に導入するデメリット・課題
メリットが多い一方で、導入にあたってはいくつかの課題も存在します。
導入や運用に費用がかかる
メタバース環境の構築には、使用ツールによっても大小ありますが初期投資や継続的な運用費用が発生します。とくにリアルな3D空間を実現しようとすると、VRヘッドセットや高性能PCが必要な場合があり、そのコストは1台あたり数十万円かかることもあります。
メタバース空間をより効果的に運営するには「カリキュラム」「講師」「支援専門員」の要素も不可欠で、人件費のことも考えなければなりません。
また、ソフトウェアのライセンス費用・プラットフォーム利用料・コンテンツ制作費なども発生するためし、メタバースを学校単位で導入するには高額な予算確保が課題となります。
教員側に新たな負担がかかる
メタバース活用には、教員のスキルアップが必要不可欠です。機器の操作方法やプラットフォームの使い方、トラブル対応など、新たに習得すべき技術は少なくありません。
メタバース特有の授業設計やコンテンツ制作にも時間がかかります。従来の授業準備に加えて、バーチャル空間での学習活動を企画する必要があるため、教員の業務負担は増加します。
VR酔い・姿勢悪化などのリスクがある
VRヘッドセットを使用するようなメタバース空間では「VR酔い」も懸念されます。視覚情報と身体の動きにずれが生じることで、乗り物酔いに似た症状を引き起こし、気分不良や吐き気をともなうことがあります。
さらに、長時間の装着による視力低下や姿勢の悪化など、身体への影響も無視できません。安全に活用するためには、利用時間の制限や、定期的な休憩を促すガイドライン整備が必要です。
セキュリティやプライバシーのリスクがある
オンライン環境では、アカウントの乗っ取りや個人情報の漏洩といったセキュリティリスクが常に存在します。児童生徒の個人データを適切に管理し、外部からの不正アクセスを防ぐ対策が欠かせません。
不適切なコンテンツへの接触リスクもあり、教育利用に特化した安全性の高いプラットフォーム選定が重要です。情報モラル教育の徹底と、トラブル発生時の相談窓口の設置など、包括的な安全管理体制の構築が求められます。
デジタルデバイド(情報格差)が拡大するおそれがある
家庭の経済状況によって、高性能な端末や高速インターネット環境へのアクセスに差が生じることがあります。メタバース学習を導入することで、かえって教育機会の不平等を広げてしまうリスクが懸念されます。
また、地域による通信インフラ格差も無視できません。都市部と地方では回線速度や安定性に差がでる場合があり、同じメタバース環境でも学習体験に差が出てしまいます。
対応している学校や機関がまだまだ少ない
メタバース教育はまだ発展途上の分野であり、対応できる学校や教育機関は限られています。専用教材やカリキュラムの整備も十分とはいえず、現場での運用ノウハウが蓄積されていないのが現状です。
また、教材開発には高度な技術と多額のコストが必要で、ひとつの教材を制作するのにゲーム開発と同等の時間と労力がかかる場合もあります。そのため、現時点では量産や汎用化が難しい状況にあります。
さらに、先行事例が少ないため導入効果の検証データが乏しく、自治体や学校が新規導入を検討する際に、費用対効果を示す明確な根拠を得にくいという課題もあります。
このように導入にはさまざまな課題も多いメタバースですが、既存のGIGA端末でも軽快に動作する「2D方式のバーチャル教育空間」が注目されています。
富士ソフトが提供する教育メタバース「FAMcampus」は、特別な機器を必要とせず、学校で配布済みのタブレット端末で利用できる2D方式を採用した教育特化型プラットフォームのメタバースです。
離島やへき地の学校をつなぐ遠隔授業の実現や、不登校児童生徒の支援において、多くの自治体で導入が進んでいます。文部科学省の実証事業にも採択され、教育現場での有効性が実証されています。
>>教育メタバースFAMcampusを活用した不登校支援についてはこちらをご覧ください
まとめ
メタバースは、教育現場が抱えるさまざまな課題を解決へと導く可能性をもつ技術です。時間や場所の制約を超えた学習機会の提供、不登校児童生徒の新たな居場所づくり、体験型学習による意欲向上など、教育の可能性を大きく広げます。
しかしメタバースは万能薬ではありません、利用定着に向ける視線も必要なのです。人材不足が叫ばれている教育行政の中で、高度なノウハウが必要となる不登校支援の取り組みを学校や自治体のみでまかなうには課題があるのが現状です。
そこでポイントになるのが、すでに全国の学校に整備されているGIGA端末を活用して導入できる仕組みかどうかです。高性能な専用機器を新たに用意することが難しい教育現場では、既存のGIGA端末でも軽快に動作する「2Dのバーチャル教育空間」が注目されています。
富士ソフトが提供する2Dの教育メタバース「FAMcampus」は、特別な機器を必要とせず、学校ですでに配布されているGIGA端末だけで利用できます。
また、人的リソースの確保や、不登校支援に関する知識・ノウハウの蓄積が十分でないといった課題を抱える自治体に対して、富士ソフトは企画立案から体制構築、日々の運営支援までを一貫してサポートしています。
メタバース教育の導入を検討されている自治体や教育関係者の皆さまは、ぜひFAMcampusの活用をご検討ください。
※FacebookはMeta Platforms, Inc.の登録商標です。
※Meta QuestはMeta Platforms Technologies, LLCの登録商標です。
※Apple Vision ProはApple Inc.の登録商標です。
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