Column
メタバースを使った不登校支援事例 さいたま市様
FAMcampus選定理由、運営のポイント、率直な評価をご紹介
2024年7月4日
さいたま市教育委員会は、令和4年4月に不登校等児童生徒支援センターである「Growth」を設立しました。ICTを活用したオンライン学習などの学習支援活動を行っており、Growthではメタバース(仮想空間)のFAMcampusを活用した新しい支援環境を提供しています。FAMcampusに入室して参加することで、家庭学習でありながら指導要領上の「出席扱い」とすることを可能にしています。令和5年度には、362人の児童生徒がGrowthを利用しています。
本コラムでは、さいたま市 教育委員会事務局学校教育部 総合教育相談室・不登校等児童生徒支援係 主任指導主事 大髙恭介氏へのインタビューをもとに、さいたま市教育委員会がなぜGrowthにメタバースを導入したのか、また、FAMcampusを選定した決め手や、あわせて導入後の率直な感想などをご紹介したいと思います。
目次
メタバース導入前の課題
設立当初、Growthではオンライン学習のツールとして主にTeamsを利用していました。TeamsはMicrosoft office関連ソフトとの親和性が高く、授業中に子どもたちからリアクションを受け取ることができる等のメリットがあります。しかし、授業が終わるとやり取りが分断されてしまうため、各家庭での子どもたちの過ごし方がわからず、状態を把握しにくいという課題がありました。
大髙氏は「対面で接する環境と異なり、Teamsのみでは休み時間など隙間時間の過ごし方から子どもたちの普段の様子を気にかけることができません。また、子ども同士のやり取りもほぼ生まれず、先生と子どもだけの閉じこもったやり取りになりがちでした。授業後に子どもたちから気軽に話しかけられるといったこともTeamsだけではできませんでした。」と、Growthの運営においてコミュニケーション全般を充実させていくことに課題を感じていたと述べています。
なぜメタバースを導入しようと思ったのか
コミュニケーションを活性化させる手立てがあればぜひ活用したいという思いがあるなか、最近話題になっているメタバースを活用できないかという提案が教育委員会内でなされました。メタバースを導入することで、子ども同士が自由に意見交換できたり、先生とのコミュニケーションが活発になったりすることが期待され、他の自治体のケースを参考にしながら、さいたま市ではGrowthへのメタバースの導入計画が進められました。
なぜFAMcampusを選んだのか
メタバースを導入すると決めてから、数ある製品を比較していくなかでいくつかのポイントが見えてきたといいます。
1.いじめやトラブルを想定したコミュニケーションの管理ができること
不登校の子どもたちに居場所をに提供するにあたって、万が一、保護者からいじめの報告を受けた際には、子どもたちを守る立場として子ども同士のやり取りを確認する必要があります。メタバースはもともと企業向けにつくられた製品が多く、コミュニケーションの内容については教育委員会側で把握できないものがほとんどです。今回の導入においては、子ども同士のチャット履歴を教育委員会側で確認できることは不可欠で、さいたま市はこの観点を非常に重要視したとのことでした。
2.ログイン・ログアウト履歴の客観データを取得できること
これまで、不登校等児童生徒は教育委員会等が提供する教育支援センターや学校の保健室に通って学習を行うことで、学校に出席したものとして扱われてきました。一方で、自宅学習を出席扱いとするかについては基準があいまいでした。現在では、令和元年10月に文部科学省が通知した「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」に、自宅で教育委員会、学校、学校外の公的機関または民間事業者が提供するICTなどを活用した学習活動を行った場合も、出席したものとして扱うことができると明記されています。
さいたま市ではGrowthの活用を学校の出席として扱うことを重要視しており、そのためにはメタバースへのログイン・ログアウト履歴の客観データを取得する必要があると考えていました。他のメタバースでは、この機能が備わっていないものが多く、採用に踏み切れなかったとのことでした。
3.ユーザー管理を教育委員会側でできること
メタバース製品は社会人向けに開発されているものが多く、ユーザー自身が登録をすることで利用を開始する製品がほとんどです。Growthの利用対象である不登校等の児童生徒は、メールアドレスを所有していないことが多く、また、メールアドレスを所有していたとしても利用までの手続きが煩雑に感じられて敬遠される可能性があります。
FAMcampusは教育委員会側の管理者が簡単にIDやパスワードを発行・管理できるため、子どもたちへスムーズに利用を案内できます。また、教育委員会側でユーザーを一元管理できるため、学校との連携も容易です。悪意のある第三者の利用を防ぐためにも、この機能は必須であると考えられます。
4.ブラウザで利用できること
GIGAスクール構想の実現により、児童生徒1人1台端末の環境は整備されてきました。とはいえ、メタバースを利用するためには高スペックの端末が求められ、いざ子どもがメタバースを使おうとすると動作が重く非常に使いづらいなどといったことがよく起こります。
FAMcampusはブラウザで利用でき、高性能な端末は必要としていません。GIGAスクール端末でストレスなく利用できることは、子どもたちを広く受け入れるという観点からも必須の条件だったと言えそうです。
運営のポイント
Growthは、約1年間の運営を経て、ほぼ毎日、誰かしらがいる空間になりました。今では学年を超えた繋がりができている手応えを感じているそうです。そのためには、「メタバースに○○があるから入る、というコンテンツの充実が大切である」と大髙氏は語ってくれました。「子どもは最初、面白そうだなと思って入ってくれますが、飽きてくると次第に空間から離れてしまいます。今では“クラブ活動で集まりたい”、“昼食会をしたい(マイクオフでもいい)”と、子どもたち自身で集まる理由やコンテンツを作ってくれていますが、まずは、大人がどう盛り上げていくか。コミュニケーションを活性化させて子どもたちに参加したいと思わせるかが大切」とメタバース運営のコツを教えてくれました。
FAMcampusの評価
最後に、大髙氏にFAMcampusの評価を伺いました。
「当初は10点満点中では5点ぐらいの印象でしたが、何度かのバージョンアップ経て、今では8点ぐらいではないでしょうか。」とのことでした。
これまでのバージョンアップされた機能のうち、特に効果を感じているという機能を2点ご紹介します。
1.自習室
FAMcampus内には自習スペースを設けています。子どもたちは自習科目や目標、時間などを設定することで、集中して学習に取り組むことができます。また、子どもたちは自習状況をグラフで振り返ったりできますし、管理者はデータをダウンロードすることで子どもたちがどのような勉強をしているのか把握したりすることもできます。単なる学習状況だけでなく、子どもたちのことを知るという観点でも非常に可能性を感じられるとのことでした。
2.オリジナルオブジェクト
管理者は画像をアップロードしてオリジナルの装飾オブジェクトを作成できます。この機能は特に子どもたちから人気で、例えば、電車を置いたら電車が好きな子ども、犬を置いたら犬が好きな子どもが自然と集まってくるそうです。今は、おみくじを置いており、時間帯によって内容を出しわけるなど、興味を惹きつけるためのツールとして活用されているそうです。
まとめ
FAMcampusはもともと学習塾や通信制高校、私立学校での活用に向けて製品化されました。2022年に採択された文部科学省の実証事業「令和4年度 次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進事業」で得たノウハウをもとに、いまでは自治体の不登校支援ツールとしての活用も広がっています。
本コラムではメタバースを活用した不登校支援において、実際にFAMcampusを活用している、さいたま市教育委員会の事例をご紹介させていただきました。
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